ご挨拶

Forty to Forty 垂水研究への想い

鹿児島に赴任して5年が過ぎました。赴任した当初より人口移動が少なく高齢化がすさまじいスピードで進んでいる鹿児島県で、高齢者を対象としたコホート研究ができないだろうかと考えておりました。様々な地域の皆様と話をさせていただきましたが、最終的に垂水市で高齢者コホート研究を行うことにしました。垂水市で本研究を行うことを決意した理由は数多くありますが、大きな理由は以下の5つです。

  1. 行政とくに市長が本研究の趣旨に賛同し熱心に後押ししていただいたこと。
  2. 県下でも最も高齢化が進んだ都市であったこと。
  3. 市に一つしかない病院が当科の関連病院であったこと。
  4. 熱心に取り組んでもらえる市の職員(保健師)がいらっしゃったこと。
  5. 人口規模がちょうど研究をするのに適当であったこと。

これからはますますチーム医療が重要になるだろうと考えて、我々医師だけではなく、歯学部、薬剤師、理学療法、作業療法、管理栄養士、保健師、心理学など多方面から参加していただく高齢者の方々を評価しようと思っております。今後さらなる高齢化社会を迎えることを想定して、エンドポイントは心不全や認知症発症という今後爆発的に増えるだろうという疾患だけでなく、介護保険の減額などを中心としたADLの改善も視野に入れております。

本研究では産学共同事業を積極的に推進することも併せて考えております。まずは私の専門でもある高血圧を詳細に検討するために、オムロンヘルスケアと共同研究契約を結び、参加者に最新の家庭血圧計を無料配布するとともに、約2か月ごとに高血圧教室を開催し、血圧に関する啓発活動がどれくらい高血圧管理に関係し、予後をよくするのかを検討することを平成30年10月より開始いたします。今後も様々な企業と共同研究を模索してまいりたいと思っております。関心がおありの企業の方々はご連絡いただければ幸いです。 本研究は、住民を健康で長生きにすることにより、垂水市を豊かな街にすることを目的として計画されてきました。さらに垂水市が、限界都市からの華麗なる復活を遂げ、垂水研究が40年後の超高齢社会日本へ提言ができ、健康になることで豊かな社会を創世するとともに、アカデミアとして産学行連携の新しい研究体制の可能性を提示したいと思っております。このような活動を行うには、人的・物的に多くの資源が必要となってきます。これを管理することを一つの目的として、一般社団法人鹿児島ハート倶楽部(https://www.k-heartclub.com/)を立ち上げました。こちらもご参照いただければ幸いです。

垂水研究参加メンバーは若くて将来有望な研究者ばかりです。今後最低25年間は垂水市高齢者の健康状態を把握して、垂水から世界へ情報発信をしていきたいと考えています。ご指導いただけましたら幸いです。

鹿児島大学 心臓血管・高血圧内科学 教授
一般社団法人鹿児島ハート倶楽部 代表理事
垂水研究 全体責任者

大石 充